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覆水が盆に返った 〜新たなる旅立ち〜

中田芳男(32歳)が妻直美への不信感を抱いたのは妻の携帯電話に送られて来たある一通のメールを目にしてからだった。

「また逢いたいネ。もう半月も逢ってないんだよネ...早く早く逢いたい! 今度はいつ逢ってくれるの・・・」直美が慌てて携帯電話を忘れ出勤したその日、パート先へ届ける為に 途中、何げなく着信のあったメールを目にしてしまった時からだった。

正月の寒い朝の事だった。
妻直美(28歳)はいつもは幼い子を保育園に預けてから食品会社のパ ート先に出勤していたが、この日は芳男が子供を預かっていた。 正月早々にもかかわらず働いてくれている妻に芳男は感謝していた。

夫の依頼で私達は張り込み尾行を開始した。間もなく妻の不倫は証拠写真と共に発覚した。報告書を手にして芳男は我々の前もはばからずに瞳に涙を浮かべていた。「どうも・・・ありがとうございました・・・」

それから半月程して芳男から一通の手紙が届いた。「色々と話し合いました。身内の人々とも相談しました。その上で離婚する ことになりました・・・。」 私は絶句した。私のせいではないが・・・心が重かった。つらかった。とてもやるせなかった。一年前の一月であった。


今年、平成18年の正月、私は日光の二荒山神社に初詣に行った。そのとき、新年の祈願をする人混みの中に中田芳男を見かけた。 一緒に居たのはあの時の妻直美さんと幼い子供の三人連れだった。子供を抱いた芳男のそばで子供に話し掛けていた。三人は楽しそうだった。しあわせそうだった。三人は一緒だった。 私は思わず目頭が熱くなった。 心の中で「お幸せに・・・」とつぶやいた。

依頼者から届いたお礼の手紙

「雨降って地固まる・・・」と言います。直美さんの手は「家内安全」のお札がしっかり握られていた。 いつまでもお幸せに。


注:この物語は事実を基にしたフィクションです。尚対象者の了解の上で仮名とし、場所設定も変えてあります。